20080507

ユニバーサルデザイン論

大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルゲーム学科 前期開講科目

すべてのひとに開かれたデザインの思考と実践

第04週:05月08日

1)ユニバーサルデザインの観点

■ 加齢による変化

人体を構成するすべての要素(骨格、筋肉、内蔵、神経など)は、加齢によりさまざまな変化が生じ、それに伴いライフサイクルとしての身体機能も[誕生 → 成長・機能向上 → 機能維持 → 機能低下進行 → 急速な機能低下 → 死亡]へと推移する。これは誰もが避けて通れない変化である。

ライフサイクルにおける身体機能の変化イメージ

ライフサイクルにおける身体機能の変化イメージ

加齢による変化の具体的状況には以下のようなものがある。

1. 感覚能力の変化

 … 聞こえにくい

 … 見えにくい

 … 話しにくい

 … 感じにくい

2. 運動能力の変化

 … 歩きにくい

 … 反応が遅くなる

 … 座りにくく立ちにくい

3. 平衡感覚・バランス能力の変化

… 倒れやすい

… バランスを失いやすい

4. 記憶能力の変化

 … 混乱しやすい

 … 覚えにくく忘れやすい

■ 社会障害の様態

社会障害は、障害認定のその種類と程度から以下のように分類することができる。

1. 身体障害

 … 視覚障害(1〜6級)

 … 聴覚・言語障害(1〜6級)

 … 肢体不自由(1〜6級)

 … 内部障害(1〜6級)

 … 重複障害(1〜6級)

2. 知的障害(最重度〜軽度までの4段階)

3. 精神障害(最重度〜軽度までの4段階)

他者から外的に認知することのできる障害から、見えない障害まで、多様な障害が存在する。障害に対する社会認識としては、高齢化社会の進行に合わせて、かつての排他的で差別的なものから、社会参加を促すものへと変化してきている。

そうした変化は、海外での障害者の呼称が、従来からのhandicapped personやdisabled personから、challengerに変わりつつある状況などからも読み取れる。

また日本においても、ノーマライゼーションの理念に基づき、障害のあるなしに関わらず、互いに支え合い、地域で豊かに暮らしていける社会障害者の自立と社会参加を、厚生労働省などをはじめとして、さまざま施策で推進している。

それらは、社会障害者として認定される人々のみを対象とするのではなく、普段健康である人々でも、ケガや病気、疲れや悩み、また妊娠などによる一時的な様態の変化は常に身近にあり、そうした状況も含めて、社会環境の側での対応を充実が必要である。

障害は、それを持つ当人の個人的問題ではなく、コミュニティーとしての社会とその環境のあり方に課せられたものであろう。

■ 幼齢への配慮

高齢者、障害者に加えて、子供も社会環境への適応において、差別される存在であったり、障害を生じている対象として考える必要がある。

子供の発達段階としては[乳児期 → 幼児期 → 学童期 → 思春期 → 青年期]といった過程を経て、成人となる。

その過程の中で、乳幼児期から学童期にかけては、以下の要因から障害を被るといえる。

1. 社会的に自立していないため保護者が必要

2. 発達過程にあって客観的判断力に欠ける

3. 発達過程にあるがゆえに好奇心が旺盛

4. 成人と比較して体格が小さく体力も少ない

5. 行動に論理性がなく記憶が混乱しやすい

「子供の目線」という言葉があるように、成人に対して子供が社会と関わるスタンスはその諸条件から、大きな差異を根本的に抱えている。そうした子供の頃の記憶を、成人である我々はどの程度持っているだろうか? 子供の頃に感じた、社会環境に対する不便や不満を思い出してみよう。

■ 身体と心理に対する研究

以上のように、社会機能の中心を担っている身体的機能維持段階にある成人健常者に加えて、加齢による変化・社会障害の様態・幼齢への配慮といった対象をもカバーすることが、UDの観点であり起点であるといえる。

さらに成人健常者であっても、身体や心理の状態や状況はさまざまである。UDにおいては、そうした個々の身体や心理の差異を認識することも重要であろう。

身体と心理は不可分なものであり、互いに影響を及ぼしあう関係にある。また身体や心理は、周囲の環境からも大きな影響を受けている。

UDの観点として、身体と心理が感じる快適さ、その逆の不快感とその限界点について、先の観察と実験などのような事例研究を繰り返し、それらの基準を明らかにしていくことも必要とされている。

2)ユニバーサルデザインのための観察と実験

■ グループによる観察と実験

□ 実験内容

前回の実験内容に加えて、前述の加齢による変化などを再現する方法を考え、グループ独自に設定したシチュエーションの観察と実験をおこなう。

なお、実験に際しては、グループ内で相互に安全を確認しながら、事故のないよう注意しておこなうこと。

□ 考察レポートの項目

1-1 軍手をはめた手で、携帯電話を操作した際、状態の変化によって、どういった問題が生じたか?

1-2 その問題が発生する要因となっている機能や形態、手順やシステムの現状はどのようなもか?

1-3 問題解決のためにどういった機能や形態、手順やシステムの改善が可能か?

2-1 口にくわえたストローで、キーボード入力をおこなった際、状態の変化によって、どういった問題が生じたか?

2-2 その問題が発生する要因となっている機能や形態、手順やシステムの現状はどのようなもか?

2-3 問題解決のためにどういった機能や形態、手順やシステムの改善が可能か?

3-1 ティッシュペーパーに小さな穴をひとつ開け、目を覆って通路を歩いた際、状態の変化によって、どういった問題が生じたか?

3-2 その問題が発生する要因となっている機能や形態、手順やシステムの現状はどのようなもか?

3-3 問題解決のためにどういった機能や形態、手順やシステムの改善が可能か?

4-1 ハンドソープをつけたままの手で、ペットボトルや容器のフタを開栓した際、状態の変化によって、どういった問題が生じたか?

4-2 その問題が発生する要因となっている機能や形態、手順やシステムの現状はどのようなもか?

4-3 問題解決のためにどういった機能や形態、手順やシステムの改善が可能か?

5-0 グループで独自に設定したシチュエーションの説明。

5-1 グループで独自に設定したシチュエーションの実験をおこなった際、状態の変化によって、どういった問題が生じたか?

5-2 その問題が発生する要因となっている機能や形態、手順やシステムの現状はどのようなもか?

5-3 問題解決のためにどういった機能や形態、手順やシステムの改善が可能か?

6  バリアフリー2008において、福祉機器・製品を見学した感想。

レポート提出については、最終の実験が終了した段階でまとめておこなうため、それまでグループ内で記録の保管をしておくこと。

ノーマライゼーション

障害者や高齢者など社会的に不利益を被りやすい人々が、社会の中で他の人々と同じように生活し、活動することが社会の本来あるべき姿であるという考え方をいう。

発端は1950年代、デンマークの知的障害者の親の会が、巨大な知的障害者の施設の中で、多くの人権侵害が行われていることを知り、この状況を改善しようという運動からスタートした。

障害者であろうと健常者であろうと、また高齢者や子供であっても、同じ条件で生活を送ることができる成熟した社会に改善していこうという営みのすべてをノーマライゼーションといい、現在特に、障害者が障害がありながらも、普通の市民と同じ生活ができるような環境づくりこそがノーマライゼーションの目的として推進されている。

インデックス担当授業の資料ユニバーサルデザイン論

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